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東京に上陸して間もないベルリン発のアグテックInfarmとは

自炊するとき、近所のスーパーや八百屋、あるいはコンビニで野菜を買う人もいるかもしれません。しかし、野菜は収穫されてから鮮度が急降下するもの。熟した野菜はとれたてが一番美味しいというのはそのためだと言われています。

今回の記事で紹介したいのは、2013年に創設されたInfarm。IoTや機械学習で、作物ごとの育成状況に合わせて気温や湿度、照明などの環境を調整する「スマート栽培ユニット」を独自に開発したベルリン発のスタートアップです。

Infarm
Photo Credit: Ifarm 設置されるIfarmモジュール式スマート栽培ユニット

同社は、デンマーク、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、英国、米国、スイスなどで事業を展開中。合計で600以上のモジュール式栽培ユニットを店舗や流通センターで展開とのこと。

農業系スタートアップで知られる同社は、2020年2月に新たに東京にInfarm-Indoor Urban Farming Japan株式会社を設立しました。JR東日本、紀ノ国屋、そして食品流通会社のムロオと連携し、日本での都市農業の拡大を推進していく発表。JR東日本と提携し、傘下の紀ノ國屋の店舗にスマート栽培ユニットを導入し、野菜の販売を2020年後半に開始する予定です。

海外の事例では、農地を垂直に“積み重ねる”ことで限られたスペースでも効率的に農作物の栽培ができる「垂直農法」といわれる手法が人気といいます。

Photo Credit: Ifarm

同社はスマート栽培ユニットを積み上げて栽培する垂直農法に加えて、土を使用しない水耕栽培を採用。従来の農法と比べて使用する土地は99.5%、水は95%、肥料は75%の削減が可能になり、もちろん農薬は不使用。

土を使用しないため、根がむき出しとなっていますが、紙包装が施されているため購入時に持ち上げやすい仕様です。

また、都市部で栽培を行うことで、輸送費も90%の削減ができるよう。高齢者の農家が多い日本の農業界は様々な問題を抱えますが、同社のビジネスはさまざまな問題解決に大きく貢献することが期待されます。

矢野経済研究所が2019年に発表した資料によると、2018年のスマート農業の国内市場規模は約141億2100万円で、今から5年後の2025年には約3倍の442億7900万円を見込んでいるよう。

Infarmは「Farming-as-a-Service(FaaS)」とも呼ぶことのできる、BtoBtoCのビジネスモデルです。つまり、システムと管理体系ごとに月額制のサブスクサービスで提供するといいます。利用者は同社と共に栽培計画を立て、システムの管理や作物のケアなどは同社が実行。年中無休でファームの状態を管理・調整などをしています。

Photo Credit: Ifarm

IoTや機械学習、クラウドの技術を使い、遠隔地より管理・操作ができ、かつ、人里離れた倉庫ではなく人々が住む都市エリアで展開できることがInfarmの強みです。

しかし英インデペンデント紙では、垂直農業で作られたレタスは、人工照明や気候制御が必要なため、通常の温室栽培と比較して約14倍のエネルギーが必要とされるといいます。輸送費や水は節約できる一方で、別のエネルギーを大量に消費するという課題があります。

エネルギー消費が大きい一方で、消費者に近い場所で野菜を栽培・販売することができる同社はサプライチェーンをなくしたことによるエネルギー削減との比較が環境負荷の焦点となりそうです。

昨年建てられた施設の動画(at Kroger in Seattle)

2020年9月16日、InfarmはシリーズCラウンドで$170 million(約180億円)もの資金調達を行いました。巨額の投資を得た同社は、調達資金を世界中に点在するインフラ(設備投資)をはじめ、R&D、採用に活用するそうです

社長のErez Galonska氏は「コロナによって農業や生態系に課せられた喫緊の課題がグローバルに注目された。Infarmは都市部の人々に寄り添い、新鮮でサステナブルな野菜の栽培をさらに多く行い、これまでより新鮮で健康な食を届けることができると信じる。」と述べました。

最先端の技術を駆使し、これまで必須だったサプライチェーンをなくすInfarmによる世界展開、そして東京での活躍に注目です。

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