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世界初!素材が空気の代替タンパク質、AIR PROTEINとは

先日、NASAは2024年に月面への有人着陸を実現させために必要な予算を280億ドル(約2兆9000億円)とする見積もりを発表した。トランプ大統領が最優先する月面着陸も、60年前ほどは世界中が熱狂していた大イベントだ。

1960年代、NASAは二酸化炭素を代謝できる単細胞生物「水素酸化細菌」に着目し、「水や宇宙飛行士から排出された二酸化炭素を水素酸化細菌に与え、人間に必要な栄養素に変換させる」というコンセプトを打ち出した。

宇宙には空気がないのは周知の事実だが、先ほどの水素酸化細菌によってサステナブルに炭素を循環させるこのコンセプトは、宇宙飛行士の必要な酸素や、栄養を再生し続けたという。

このNASAの賢いコンセプトからアイデアを発想したスタートアップ企業が、研究を進め、二酸化炭素から必須アミノ酸を効率的に生成できる水素酸化細菌を発見した。今回紹介するのは、その水素酸化細菌を用いて生み出されたAir Protein

2008年アメリカのサイエンティストリサ・ダイソン氏はジョン・リード博士と共にKiverdiを設立。これまでバイオテック企業として微生物を利用し、CO2を燃料、オイル、木材などのカーボンリッチ(炭素が豊富)な物質へ変えてきたという。

そんな中、リサが研究室で製造業者と協働し、微生物を研究し続ける過程で、CO2から必須アミノ酸を効率的に生成できる水素酸化細菌を発見したのだ。このTEDで語る、彼女がKiverdi共同創設者であり、新たに作られたAir Proteinの取締代表役を担うリサ・ダイソン氏である。

リサ・ダイソン「昔の宇宙開発技術が現代の食べ物を変えるかもしれない。」 from TED

このように4年前のTEDで可能性について噂され、最近でも多くのメディアで取り上げられるAir Proteinは、誕生した昨年の年末あたりから、空気をもとに植物性タンパク質を多く含む植物を育成するという仕組みが世界初として衆目を集めている。

作成プロセスでは私達の身の回りにある大気中のCO2と再生可能エネルギー、そしてタンパク質が豊富な大豆の種を使用するとのこと。ビーフと比較して、150万分の1しか土地を利用せず、1.5万分の1だけの水を使用するという。

プロセスにおける最大の強みとも言える水素酸化細菌CO2を消費することで、アミノ酸を作り出すことができる。ビール工場やヨーグルト工場にならぶようなシルバーの発酵缶の中で大豆の種から収穫前までのプロセスが行われる。プロセスに使われる電力は太陽光だけでなく水力、風力、地熱など幅広い再生可能エネルギーを使用しているとのこと。

Photo Credit: Air Protein

Air Proteinのプロテインパウダー(写真右)になるまでにかかる時間は、普通に農場で太陽に当てて育てるプロセスより格段に早く、数時間で完結するという。言わずもがな、大豆はタンパク質と油でほとんどできているため、植物性タンパク質の材料としては優秀だ。

一般的なソイプロテインパウダーとくらべ、Air Proteinの育成するものは最大で二倍のタンパク質比率を誇るとのこと。さらにAir Proteinには、9種類の必須アミノ酸を全て含んでおり、動物のタンパク質に近いアミノ酸スコアを保有し、大豆の2倍ものアミノ酸を含んでいるという。

ベジタリアンが摂取しづらい栄養素として知られるビタミンB12ナイアシンチアミンなどのビタミンB群も含んでいるとのこと。また、空気から生成されるため、遺伝子組み換え作物・農薬・除草剤・ホルモン剤・抗生物質なども不使用だ。

リサ・ダイソン氏は地球を宇宙船にたとえて、地球の資源や酸素などの持続可能性の大切さを説いた。地球上の人口が100億人に達するのが2050年と言われる中、食料生産需要は70%増加するといわれ、現在の食料生産は排出される温室効果ガスの20%を占め、地球上の37%もの土地を使用している。

Photo Credit: Air Protein

昔使われたコンセプトなどを応用し、これからの持続可能性につなげる同社の今後の動向に注目したい。

参照記事

空気が原料のプロテイン「Air Protein」が登場

Air Protein

Kiverdi