フードテック 循環経済

珈琲豆ではなく種の殻で作る、地球に優しいコーヒー「Atomo Coffee」とは

朝起き、眠さのあまりぼやける目を、利き手でこすりつつお湯を沸かしてインスタントコーヒーを淹れる経験を大半の大人は経験したことがあるだろう。

あるいは、コーヒー豆を生豆で購入し、好きな濃さに焙煎したら冷まし、豆を粗挽きしたら、やっとのことでドリップやフレンチプレス、エスプレッソマシンでコーヒーを入れる。こうしたことを日常的に行っている物好きもいるかもしれない。人によってはお湯の温度が90℃と86℃で味がぜんぜん違うと主張する愛好家もいるくらいだ。

Photo Credit: ATOMO!

しかし、毎日1杯コーヒーを飲むと、珈琲豆の木を1年間で10本消費する計算になるという。(1本の珈琲豆の木から年間で収穫できるコーヒー豆は450gだという)

2019年、日本だけで消費されたコーヒーは約45万トンである。20年前と比べて年間消費量は約10万トンも増加している。驚くべきは、日本の消費量は世界全体の消費量のうちたった4%ということ

これが、世界におけるカーボン・フットプリント(農業分野)がカカオについで多いといわれる所以である。赤道直下の気候で栽培が行われるコーヒー豆の生産国の多くは中低所得国。彼らにとっては大切な輸出品目であり、数少ない大きな資金源でもある。

近年、原生のコーヒーが絶滅の危機に遭うのを尻目に、利益を追求する農園による規模拡大、あるいは森林伐採が進んでしまっているとのこと。

今回の記事で紹介したいのは、Atomo Coffeeと呼ばれる、コーヒー豆を使用しない、見た目、味、香りを分子レベルで再現した豆なしコーヒーだ。この豆なしコーヒー「Atomo Coffee」は、スイカの種やひまわりの種の殻など、自然界にあるサステナブルな原料から取り出した分子で作られる。

つまり、アップサイクルによって本来捨てられるような果物やひまわりの種から、価値の高いコーヒーを作り出したのだ。

ちなみにアップサイクルとは、従来から行なわれてきたリサイクル・再循環とは異なり、単なる素材の原料化、その再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを、最終的な目的とする方法論のことである。

Atomoは、コーヒー豆から作られた本物のコーヒーの成分を解析し、分子レベルでコーヒーの味を再現した豆なしコーヒー「Atomo Molecular Coffee」を開発。コーヒー豆は上の写真でもわかるとおり、フルーツである。フルーツの果実は赤色で、ご覧の通りチェリーっぽい。

コーヒーの成分解析を通して、植物やフルーツの種子に再現性を見出した同社は、ひまわりの外殻を使用しても再現できるところまで開発が進んでいる。

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一年で450gのコーヒーを生み出す珈琲の木とくらべ、もっと種の収穫周期の短い作物を利用することで、従来のコーヒー栽培によるカーボン・フットプリントを減らす目的があることが伺い知れる。

開発チームはAtomo coffeeが普及すれば、プランテーション(大規模農園)の拡張を防ぎ、自然保護に寄与することを目指しているとした。CNBCによって行われた一般的なコーヒーとAtomoとの比較試飲調査では、なんと70%の学生がAtomoの方が美味しいと答えた様子。

さらに「わたしたちは森林を破壊し、殺虫剤で環境を汚染し、労働者を奴隷のように働かせています。たかがコーヒーのためにです。もっと良い方法があるはずなのです。」と創業者クライシュ氏は述べたという。

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新たに開発されたAtomo Coffeeには農薬も森林伐採も必要ない。画期的な技術を用いることでフードテック業界に名を轟かす同社は、今年8月11日に$9million(約9.5億円)ほどの資金調達を行った。

今回の調達資金は、かねてより期待された2021年のシアトル拠点の焙煎所を建設するために使うとし、マーケットに製品が浸透するかが今後の焦点となりそうだ。

コーヒー愛好家は相変わらず生豆を購入し続けるだろうが、それはそれで生産地の農園における量より質を高めようといったトレンドを生み出すかもしれない。果たして希少品種の再現も可能なのだろうか。Atomoの今後の活躍に期待したい。

参照記事

Atomo Raises $9 Million to Bring Molecular Coffee to Market

世界のコーヒー(生産量、消費量、在庫量、輸出量、輸入量の推移)